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5月のとある日曜日。内山氏との待ち合わせは17時か。
じゃあ、午後に家を出て、いくつか商店街を見て歩けるな。
えーと、○○商店街と○○商店会なら、内山家のある中央線のN駅までは
すんなり行けるね。
暑い日だった。
あまり汗をかくと、厄介なくせっ毛がくりんくりんになるので、ゆっくりと商店街を見て歩く。
途中、内山家への手土産に酒を買っていくことにする。
なにがいいかな。。。
まてよ、うっちーの彼女のAや子(伏字)がいるんだから、女性がのみ易いワインにしよう。
ふっ、女性と言えば、赤でもない。白でもない。そう、ロゼだ―。
ロゼ―それは
はっきりした色ではない。しかしそれでいてその風味は個性をもち、
うすいピンクともマゼンダともいえぬ色合いは、鮮やかに人の目を引く。
何よりもいざとなれば、答えを曖昧な甘美さと、かすかに霧がかった世界へと
いざなってしまう魔力を持つ―
それが、ロゼだ。
小悪魔的だからこそ惹きつける、女性の優美さをふと思った―
…などと、詩人的に考えながらそこらへんにある一番おいしそうで瓶の可愛いものを買った。
もとより、銘柄なぞ詳しくもないのに、ワインを語れる口じゃないねぇ。
ぶつぶつつぶやきながら店を出た。
府中にあるH商店街からJR線に乗る。
待ち合わせの17時に少し遅れそうだ。
…ふ、何事も時間どおりに行く人間は、ビッグにみられないぜ―
と思ったが、一応電話をした。
「わかったよ、しょうがないなー」
電話のむこうで話す内山青年はやや呆れた様子で言った。
待ち合わせの駅につく。
しばらくお迎えを待つ間、汗を拭き拭きする。
あぶら取り紙で一生懸命顔洗いをしていた時、視界にこちらへ向かってくるカップルが
写った。うっちーとAや子(伏字)の登場だ。
挨拶もそこそこに、歩き始めたが、何か雰囲気がおかしい。
笑顔の中に冷たい空気がぴーんと張り詰めている。
なんだろう?
違和感を憶えつつも、歩いていた。
うっちーが、信号無視ぎりぎりで車に惹かれそうになったが、
車をとめ何事もなかったかのように歩いている。
「もー、いつもああなんだからさ」
Aや子(伏字)こぼした。
「いやー、今日じゃないかと思ったよ」
いかにも寝巻きっぽいトレーナーにハーフパンツをはいたうっちーが言った。
いやいや、楽しみにしてたよ、忘れてたの?
「忘れたと言うか、忘れてんじゃないかと思ったよー」
まさか、そんなことないよ。
「だって16時過ぎてもこねーんだもん。1時間も。スッゲー腹減った」
!!16時!?
「メールにそう書いたじゃん!」
…すみません、勘違いしてました。のうのうと商店街見てました…
「俺たち一時間も食べ物前に”お預け”状態」
Aや子が”うんうん”とうなずいた。
(T-T)ゴメンヨー
本当に勘違いだったんだよー。
かくして、俺はビックに見られるどころか勘違いビックリ野郎へと格下げとなった。
日本国債の格下げよりもさらにランクダウンだ。
弁明してくれる俺の塩じいはどこにいるんだ…
彼らの家は、マンションの8階ぐらいだったように思う。
駅からも近く、綺麗だ。大きい公園もすぐそばにあり廊下からの見晴らしは良い。
案の定、部屋も綺麗なフローリングだった。
リビング兼寝室には、テレビもあり、プレステやなんかもある。
「まあまあ座って」
と言われるままに、ちょこん、と座り、部屋をみまわした。
観察といっても匂いはかいでない。
いたってこぎれいな部屋で、うっちーの仕事場は台所だった。
うっちー毎日なにやってんのー?
「あれ」
うっちーが答えるより早く、Aや子が棚の上を指差した。
そこには、パソコンゲームソフトの箱が転がっていた。
あちゃー。
*****
彼らが用意してくれた料理は、本当にすばらしかった。
和洋折衷の料理は、綺麗に皿に盛り付けてあり、バラエティも豊かだ。
ナッツ好きの俺も納得のミックスナッツもちゃんとある。
俺の前にミックスナッツを出すとカシューナッツとピスタチオナッツばかり食う習性を発揮する。
数あるなかでも一番このグルメットな俺をうならせたのがわさび醤油で頂く生湯葉だった。
48期生の弓場さんではないから注意だ。
食の一方で酒と話も進む。
酒のほうは、用意されたビールを飲み尽くし、冷蔵庫から秘蔵っ子の日本酒を
引き出すことに成功した。
うっちーは営業代行の仕事あるの?
「あるよ、この前ちゃんと契約取れたよ」
おお、いいねえ!
「俺は営業向いてるからさー」
うらやましいなー。俺は営業勉強中だよー。
「おおみはなにしてんの」
Aや子(伏字)が聞いた。
うーん…ぽつぽつと…ね。でも、5月の収入4月の2.5倍になったんだよ!!
「おお、すごいじゃん」
○(一桁)万円
………絶句………
どうやら、目の前の青年にかけてやることばも見当たらなかったようだ。
Aや子はとても素直で話やすい女性だった。
ひと段落ついたところでうっちーがごそごそなにやら取り出した。
パーティーの定番、「ジェンガ」だった。
木を互い違いに組み合わせたタワーの下のほうから木を抜いていき、また上に積み上げる
あれだ。
はっきり言うが、俺は指先が不器用だ。
保育園で一人折鶴が折れずに泣いていた不器用な俺は自信がなかった。
折り紙が折れずに泣いている俺を見て、俺の初恋の女の子が不憫に思ったらしく、
「せんせーい、おおみくんが折れないでないてまーす」
と、みんながいるところで大声で先生に伝えてくれた。
一斉にこちらを振り返ったクラスメイトの視線を感じ、俺はますます泣けてきた。
人生では優しさも時に人をきずつけるもんだぜ―
俺はそのときそのことを知った。
そして、小さな恋心もたくさんの折り目がついた折り紙も涙色に染まった。
第1回目の「ジェンガ」
は、三ターンと言う圧倒的速さで崩壊した。
「はやすぎー」
Aや子(伏字)が言えば
「つまんねー」
うっちーがとどめをさした。
おいおい、まてよ、もう一回!
ついに、自分が持ってきたワインも登場した。
ロゼだかなんだか知らないが、という雰囲気の中、半分は自分で飲んでしまった。
こうなれば酔拳だ。
ほろ酔いの中、トランプの「大貧民」では、自信を持って望んだが、カモにされた。
目の前にいるカップルは、日ごろこれらゲームの鍛錬をつみ、そうして俺を今カモにしている!!
そう確信した。
と、とんでもないところに足を踏み入れてしまった!!
こ、これがやつのビジネスか!!
後日、大海認定ビジネスモデル特許認定証をおくろう。
***
楽しい時はすぐに過ぎていくものだ。
終電の時間が迫る前に、最後にうっちー作の茶漬けを食べる。
これもまた、美味であった。
カモにはされたがすっかり居心地が良くなって住もうかと思ったが、
そんなわけにも行かない。
それでもこんな時間まで俺がいても嫌な顔をちっとも見せない二人だった。
外はすっかり涼しかった。
駅の喧騒も、昼間とは全く違っていた。
楽しい時間を提供してくれた二人に感謝の気持ちで手を振り、
満腹感と楽しい時間への満足感のなか、八王子方面のホームへと、俺は向かった。
さあ、次回のお宅訪問は誰にしようかな…などとかんがえつつ…
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